正直、面倒だと思うこともある。
形ばかりの贈り物。
ただ、過ぎていく父の日。
でも。
父の日に、父を想う
案外いい日なのかもしれないな、と今は思う。
あの時の、父の真意は未だ確かではないけれど。
それでも、私には私なりの「理由」があったことを、きっと尊重しようとしてくれたのだと思う。
あの日。
きらきらと降り注ぐ光がまぶしかった朝。
私を迎えに来た父は、全身に怒りを漲らせていた。
「ぶたれる」
目をつむり、身体を固くした私の耳に。
「ご迷惑をおかけしました、ありがとうございました」
丁寧に言葉を述べる父。
そして背を向け歩き出す。
慌てて追いかける、背中。
何も聞かず、何も言わず。
黙々と先を行く、父の背中。
怒りが少しずつ、少しずつ弱くなっていき、
悲しみが少しずつ、少しずつ濃くなったように見えた。
家に着く直前の店の前で。振り返らずに父が聞く。
「ごはん、食べたんか?」
父さん、
贈るタオルに想いを込める。
あれから数十年。
記憶の中のあなたより、幾らか線が細くなったように思うけど。
追いかけた背中は変わらずそこにある。
孫を抱き、目を細める父に。
父さんには、オレンジ色が似合うと思う。
父さんのように、あたたかくて深い色だから。
さわった感じも、父さんみたいで。
やさしいだけじゃない、ちゃんと、強さがある。
父さん、ありがとう。
この先。
私を追いかけてくる、この小さな手に。
あの時の父と、同じ背中を見せることができるだろうか。